本音を聞き出すズル賢い質問法


【其の13】本音を聞き出す質問法とは?

彼は、もう一つの印刷屋の、経営者ブラッドフォードに会ったことが
一度もないため、これは、自分に好意を持ってくれる町の人だろうと考え、
現在の計画や、将来の見込みなどについて話し始めた。

一方、ブラッドフォードは、やがては印刷業界の大部分は
自分の手中に収めるつもりだ、と言うのを聞くとキーマーは、
次のように切り出した。

 

自分が、もう一つの印刷屋の経営者であることは明かさずに、
巧みに質問したり、疑問を挿んだりしながら相手を誘い出し、
彼の計画や、頼りにしている後援者のこと。

また、どのようにして、事業を展開して行くつもりかなど、
したたかな質問法で、全て暴露させてしまった。

その質問法を、傍らに立って始終を聞いていた私は、一方は、
悪賢い古狸で、片方はまったくの新米だと、すぐに見てとれた。

ブラッドフォードは、私をキーマーの所に置いて
帰って行ったが、後で あの老人が誰だか打ち明けると、
キーマーは、目ん玉が飛び出るほど驚いた。

 

この印刷所には、古びた印刷機と 数の少ないすり減った
14ポイントの活字が、ひと揃いあるだけだった。

だが、折りからその活字を主人自身が使って、さきに述べた
アクィラ・ローズの挽歌を組んでいるところだった。

ローズは聡明な青年で、人柄も立派だったし、
町中の人々からたいそう尊敬され、州会の書記を勤め、
詩もなかなか上手だった。

キーマーも詩を作りはしたが、非常に下手だった。

ただし、彼は詩を書くとは言えない。

 

というのは、彼のやり方は、頭の中で詩ができ上がると、
そのまま活字に組んでしまうのだったから。

それで下書きはなし、ケースも一対あるだけだし、
それにその挽歌には、多分 活字がみんないるから、
誰も彼を手伝うわけにはいかない。

私はいろいろいじってみて、印刷機を調整して使えるようにした。

経営者のキーマーは、この印刷機を使ったことがなく、
また、印刷機のことについては、全くの無知だったのだ。

私は、彼がその挽歌を組み終わり次第、すぐにもきて
印刷するから、と約束してブラッドフォードの家に帰った。

 

もう一人の経営者ブラッドフォードは、当面の仕事面倒を見てくれて、
私は、彼の家に寝泊まりし 食事も出してもらった。

数日たつと、キーマーは挽歌を印刷するために私を呼び起こした。

その時には、ケースももう一対できており、
増刷するパンフレットもあったので、
キーマーは、私にその仕事をさせたのである。

後で分かった事だが、この2人の経営者の印刷屋の
仕事の腕前は、極めて怪しいものだった。

 

経営者でありながら、ブラッドフォードは印刷屋の修業を
したわけではないし、無学でもあった。

キーマーの方は、いくらか学問はあったが、ただ活字を組んで
版にすることができるだけで、印刷のことは全くの無知。

彼は、例のフランスの預言者たちの仲間だったことがあり、
この派特有の、熱狂的な興奮を思わせる振る舞いに出ることがあった。

だが、この時分は、特にこれと言って信じる宗教はなく、
時に応じてあらゆる宗教から、その信条を少しずつ取ってきては
それを口にするだけだった。

世間のことにはまるで暗く、後で気付いたのだが、
その性質にはだいたい、ならず者なところがある。

彼は、私が自分のところで働いているくせに、
ブラッドフォードの家に住んでいるのが気に入らなかった。

 

だが、一戸を構えはしているものの、家具がなくて
私をおくわけにはいかないもので、家主であるさきに述べた
リード氏の家に私を下宿させた。

私のトランクと衣類は、この頃にはもう届いていたから、
巻きパンを食べながら、行き来しているところを偶然初めて
見られた時よりは、私もリード嬢の目にも、
みなりがいくらか上がって映ったはずである。

やがて、町の読書好きな若者たちの間に 知人が数名でき、
その人たちと私は、とても愉快に夜の時間を過ごすようになった。

そして、勤勉と節約とでお金を残して ボストンのことは
できる限り忘れるように努力した。

秘密を知っていはいるが、手紙をやった時にも人に知らさないで
いてくれた友達のコリンズのほかには、誰にも住所を知られたくない
と思いながら、自分の生活にすっかり満足して暮らした。

 

ところが、その中に ある事件が起こって、
以外に早く私は家へ帰らねばならないことになった。

私には、ロバート・ホームズという義兄があった。

彼はボストン・デラウエア間の交易に従っている一帆船の
船長だったが、フィラデルフィアの下流40マイルのニューカースル
にきた時、私のことを聞いて手紙を送ってくれた。

突然、私が失踪したので、ボストンで家の者が心配していると言い、
みんな私に好意を持っていると、保証してくれた。

もし、私が帰りさえすれば、何事もかならず満足の行くように
取り計らうからと、熱心に里帰りを勧めてきた。

私は、この手紙に返事を書いてその忠告に感謝したが、
同時に、ボストンを去ったのも、 彼が思っているほど私が
悪かったからではないことがよく分かるように、説明した。

 

この地方の知事、サー・ウイリアム・キースが
この時ニューカースルにあって、私の手紙が届いた時、
たまたまホームズ船長と席をともにしていた。

船長は、私のことを 知事に話して手紙を見せたところ、
知事はそれを熟読し、私の年齢を聞いてびっくりしたらしく、
見込みのある青年のようだから、激励してやるがいい。

フィラデルフィアの印刷屋は、ろくでもない連中ばかりだから、
ここで開業すれば、かならず成功するだろう。

自分としては官公署(国と地方公共団体の諸機関の総称)の
仕事をとってあげたり、その他、できるだけ援助を惜しまないと
言ったそうである。

これは、後にボストンで義兄から聞いたことで、
その時は、まだ私は知る由もなかった。

 

さてある日、キーマーと2人で窓際で働いていると、
知事と、立派な身なりをした紳士が通りを横切って
真っすぐ私たちの店へ来店してくるのが見えた。

そして、やがて戸口で尋ねる声が聞こえた。

キーマーは自分のお客だと思って、すぐさま駆け下りていった。

ところが、知事は私が在否であるかを尋ね、上へ上ってきて、
生まれて初めて経験するような礼儀正しい調子で、いろいろ挨拶の
言葉をならべ、私と知り合いになりたいと言ってくれた。

そして、初めてこの土地へきたとき、どうして知らせてく
れなかったのか、とやさしく私を責めてくれた。

その後、自分はこれからフレンチ大佐と、彼の言葉によれば、
上等のマデーラ酒(白ぶどう酒の一種)を一杯やりに行く所だが、
そこの料理屋まで付き合ってはくれまいかと言った。

<成功する経営者と、失敗する人の違い / フランクリン、ボストンに帰る>

by 上田真司

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